日本政府、新法「特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」が可決 – AppleとGoogleに第三者アプリストアの許可を義務付け

日本政府、新法「特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」が可決 – AppleとGoogleに第三者アプリストアの許可を義務付け

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日本政府は6月12日、「特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」が参議院本会議において可決され、スマートフォン市場における競争の促進を目指す新たな法律が成立しました。この法律は、欧州連合のデジタル市場法(DMA)に似た法律で、AppleとGoogleなどの大手テクノロジー企業に対して、第三者アプリストアや支払いシステムの許可を義務付ける内容となっています。

法律の目的

この新法の主な目的は、スマートフォン市場における公正な競争環境を確保し、イノベーションを促進することです。現状、AppleとGoogleによる寡占状態で、新規参入者やスタートアップ企業が競争に参加することが非常に困難です。

公正取引委員会はこの法律の意義について以下のように説明しています。

  • 我が国の経済成長のエンジンとなるべきデジタル分野での公正な競争環境を確保することにより、イノベーションを活性化し、消費者の選択肢の拡大を実現する必要がある。
    • 重要な社会基盤であるスマートフォンのアプリストア等が寡占状態である中、デジタル分野の成長に伴う果実を、デジタルプラットフォーム事業者のみならず、スタートアップを含む関連する事業者が、公正・公平に享受できる環境を実現
「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律の概要」より抜粋

このため、公正取引委員会(JFTC)は、新規参入が容易になるよう競争環境の整備を目指しています。

法律の概要

新法では、指定事業者(現在はAppleとGoogle)が以下の要求を遵守することを義務付けています。

  • 第三者アプリストアの許可
    • セキュリティ、プライバシーの確保等が図られているアプリ代替流通経路を実効的に
    • 利用できるようにすることを義務付け
  • 第三者課金システムの利用
    • 決済・課金システムの利用義務付けを禁止。アプリストアのビジネスユーザーへの利用
    • 条件等(手数料含む)を公正、合理的かつ非差別的なものとすることを義務付け
  • ブラウザ・エンジンの利用義務付け
    • ブラウザ・エンジンの利用義務付けを禁止

さらに、指定事業者に対して以下の行為が禁止されています。

  1. プリインストール、デフォルト設定
    • デフォルト設定を容易に変更できるようにすること、ブラウザ、検索、ボイスアシスタントの選択画面を表示すること等を義務付け
  2. 自社サービスの優遇表示
    • 検索ランキングの表示において、自社のサービスを他社の同種のサービスより有利に扱うことがないようにする
  3. データの不正利用
    1. サードパーティのサービスに関係する公に入手できないデータを、自社の競合サービスの提供に利用することを禁止
    2. データの取得、使用条件や管理体制の開示義務
    3. 効果的なポータビリティの実施促進のための無償のツール等の提供を義務付け
  4. 機能へのアクセス制限
    • OS等の機能への自社と同等のアクセスを認めることを義務付け

セキュリティとプライバシー

この新法は、セキュリティやプライバシー保護の重要性も強調しています。

AppleやGoogleなどの指定事業者は、第三者アプリストアや課金システムがセキュリティリスクを増加させないよう、必要な措置を講じることが求められます。

公正取引委員会は、関係行政機関と連携し、セキュリティやプライバシー保護のためのガイドラインを策定する予定です。

実効性の確保

法律の実効性を確保するために、公正取引委員会は指定事業者の遵守状況を継続的に監視します。違反が認められた場合、課徴金納付命令(算定率20%)などの措置が講じられます。

また、関係行政機関や外国の競争当局と連携し、継続的な対話を通じて競争環境の整備を図ります。

EUでは既に…

日本政府は、EUのデジタル市場法(DMA)、英国のデジタル市場競争消費者法案、米国で進行中の反トラスト訴訟など、国際的な動向を踏まえた上でこの法律を制定しました。これにより、日本もデジタルプラットフォーム事業者に対する規制を強化し、国際的な競争環境の整備に寄与することを目指しています。

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「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律の概要」より

まとめ

「特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」は、日本のスマートフォン市場における競争を促進し、イノベーションを活性化するための重要な一歩です。

消費者の選択肢が拡大し、公正な競争環境が整備されることが期待されます。一方で、セキュリティやプライバシーの確保、法律の実効性確保が今後の重要な課題となります。AppleとGoogleがどのように対応するか注目されます。